緑が濃くなる頃
梅雨入りを迎え、季節は少しずつ夏へ向かっています。 日中は日差しの強さを感じるようになり、空気にも少しずつ夏の重たさが加わってきたように思います。
この時期になると、 「なんだか食欲がない」 「体がだるい」 「よく眠れない」 といった声を耳にすることがあります。
熱があるわけでもなく、どこかが痛いわけでもない。それでも、いつもの調子が出ない。 そんな“病気とまでは言えない不調”を抱える方が少なくありません。訪問先でも、そんなお声を耳にすることが増える季節です。
季節の変わり目は、私たちが思った以上に体への負担が大きいものです。
先日も、40代前半の利用者さんが入院されました。 もともと入院をとても嫌がっておられた方です。定期往診で検査をしたところ数値が悪く、急遽入院することになりました。
訪問の際、「もし入院したら、大好きなものを差し入れしますね」と励ましていたのですが、入院して間もなく、私の携帯に電話がかかってきました。
「差し入れ、まだですか?」
病院の食事が少し口に合わなかったのでしょう。 入院をあれほど嫌がっていたわりには、弾むような元気そうな声に、思わず受話器の向こうで笑ってしまいました。
約束どおり、お好きだと聞いていた「とんかつ弁当」を届けてきました。 ベッドの上で豪快に頬張る様子を見守っていた看護師さんも、そのあまりの食べっぷりの良さに思わず笑顔に。そんな温かい光景に、こちらもホッと胸をなでおろしました。
元気そうに見えても、本人が大丈夫だと思っていても、体は正直です。 そして、それは利用者さんだけではありません。訪問する私たちも、ご家族も同じです。
理由はわからないけれど疲れやすい。なんとなく気分が晴れない。そんな日が続くこともあります。 もし最近、「少ししんどいな」と感じている方がいたら、それは決してあなただけではありません。季節の移り変わりの中で、多くの人が少なからず影響を受けながら過ごしているのだと思います。
私たちの仕事は、病気そのものを治すことではありません。 けれど、いつもと違う表情や声の調子にいち早く気づき、その方の不安や戸惑いにそっと寄り添うことはできます。
それもまた、私たちの大切な役割であり、この仕事の誇りだと感じています。
車を走らせながら窓の外を見ると、雨に洗われた木々の緑が日に日に濃くなっているのを感じます。
季節は確実に次へ進んでいます。 その瑞々しい緑に少しだけ心を癒されながら、私たちは今日もまた、大切な利用者様が待つ次のお宅へ向かいます。